数多(あまた)要素を組込んだブラックホール的アンプ

■はじめに
別冊Stereo Sounndの”往年の真空管アンプの大研究”を2008/7/27に自費購入しました 内容は管球王国からの抜粋であり既にリークとマックとマランツのパートは持っていましたが、QUADのパートは参考になりました 何の参考って・・・QUAD2タイプの製作にやる気が出たのです、それでサッカーの北京五輪壮行試合の日本-アルゼンチン戦を見ながら基本回路を書きました。
直ぐ製作しましたが・・ 恥ずかしいくらいパワーが出ません、それ以降回路変更を行い試行錯誤が始まりました。更に1ケ月あの熱い恋の季節も終わる頃ようやく気に入った姿になりました。
追伸:昭和の頃、クワドと当方が言ったら クォードですよ!と神奈川の人間に訂正された記憶があります。
■最終回路図

当方が理解するQUAD2は(1)5極管初段 (2)マニアックさに唸る位相反転 (3)出力管カソードNF、でしたが前出の本に”QUAD2は出力段を含め差動アンプとして機能しているらしい”と出てました、でも”らしい”では納得出来ませんので当方は明確な差動にしました、カソードNFについては代用として超三結で出力管インピーダンスを下げる方法にしました、結局QUAD2との類似は初段が5極管で多極出力管を採用した事です。
■回路説明
初段:
初段は6AU6の差動です、共通のカソードから3mA流しました、単管なのでバランスVRは設けないで複数の管を差し換えてIpが近いものを組合わせます。
定電流回路は基準電圧としてLED降下電圧を利用しています。
尚、ペア管の選別方法は、
(1)正相に1本の基準管を入れ 逆相に一通り被検証管を次々入れてIpを記録します。
(2)Ip比が0.9以上ならペアとします。
と簡単に書きましたが、Ipの一巡計測だけで任意管同士の相性が判る一覧表をEXCELでつくり始めました、が3本3パターンの所で飽きました。勘と力わざのほうが早い!。
参考:Ip記録、低い電位がより多く流れる
6AU6 |
識別# |
プレート電位(V)Vcc260V165K負荷 |
ペア |
REF |
TO2 |
73 |
90 |
122 |
112 |
123 |
51 |
67 |
|
被検証管 |
GE1 |
96 |
|
|
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|
|
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A組 |
GE2 |
|
78 |
|
|
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|
|
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GE3 |
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43 |
|
|
|
|
B組 |
GE4 |
|
|
|
53 |
|
|
|
|
GE5 |
|
|
|
|
44 |
|
|
B組 |
NE1 |
|
|
|
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|
114 |
|
|
NE2 |
|
|
|
|
|
|
99 |
A組 |
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6HZ6 |
識別# |
プレート電位(V)Vcc260V165K負荷 |
ペア |
REF |
HI2 |
93 |
80 |
|
被検証管 |
HI1 |
106 |
|
|
HI3 |
|
122 |
|
|
6AU6のスクリーングリッドは正相と逆相を一緒にして抵抗経由で給電します、そうする事で同相ひずみ成分の打消しも期待できます。尚、MJ2008-9月号に6AU6差動の検証レポが在りました。
ドライバ段:
当段にかかる電圧は出力管バイアスが重畳するのでは出力管より過酷ですが定電流リミットされるのでPd=1.5W以上なら何でも使えます、今回は6N1Pが使用できました、尚ドライバ段と初段はDCヒーティングを行いカソード電位も0Vを少し下回る程度なのでヒータバイアスは掛けません。
AC的には帰還管ですがDC的にはカソードフォロアを構成し、当段グリッド電圧で出力管のバイアスを制御します。
出力段:
6V6タイプを使用したプシュプルの差動です、しかもワンタッチでビームあるいは3極接続に変更可能です。
差動の定電流回路は5V三端子レギュレータを使用しました これは出力端子に75オームが負荷されると5÷75=66mAの一定電流が流入する事を利用したものです。 尚、レギュレータが熱くならない様にレギュレータドロップ電圧を4〜6Vに収めるべく以下のように電圧配分を気遣いました。
レギュレータドロップ電圧が4〜6Vだと6V6共通カソードは+9〜+11Vになる
↓
6V6の1Gは-11〜-9V(バイアス20V)になる
↓
6N1Pグリッドは-18〜-16V(バイアス7V)にする必要がある←VRで調整可能とした
試行錯誤のあゆみ:当初、帰還管が上流で初段が下流となるSRPPにしていましたがゲインが十分にとれないため、6AU6をTRに置換えたり、6AU6を高抵抗負荷に変更したり いろいろ対策しました。以下その経過です。
・帰還管6N1Pが上流で初段6AU6が下流となるSRPP、(要素回路別の出力状況)
(1)6V6が5極での超三結、6V6差動あり・・・最大出力 2.7W(入力2.6Vpp)←音質3位、当初案
(2)6V6が5極での超三結、6V6差動なし・・・最大出力 9W(入力3.4Vpp)←音質5位、低音膨らむ
(3)6V6が3極での超三結、6V6差動なし・・・最大出力 3W(入力1.25Vpp)←音質3位
(4)6V6が3極での超三結、6V6差動あり・・・最大出力 2.1W(入力2.0Vpp)←音質1位
(5)6V6が3極 、6V6差動あり・・・最大出力 2.1W(入力0.7Vpp)←音質2位
・上記の条件で6AU6をTRに置換えたSRPP、(要素回路別の出力状況)
(6)6V6が3極のみ、6V6差動あり、6AU6をTRに変更・・・最大出力2.3W(入力0.21Vpp)←大入力でひずむ同相打消しが不十分
(7)6V6が3極での超三結、6V6差動あり、6AU6をTRに変更・・・最大出力1.9W(入力0.33Vpp)←大入力でひずむ同相打消しが不十分
・6AU6を抵抗負荷に変更、SRPPではない(要素回路別の出力状況)
(8)6V6が3極での超三結、6V6差動あり、6AU6は抵抗負荷270K・・・最大出力 2.3W(入力0.5Vpp)←音質2位
(9)6V6が3極での超三結、6V6差動あり、6AU6は抵抗負荷165K・・・最大出力 2.3W(入力0.84Vpp)←音質1位
考察:
出力段差動はパワーは落ちるし高域も落ちるしかし音は3段階(分解能・奥行き・うっとり感)良くなる。超三結にすると音域が安定するがゲインは落ちる。
結局、音も良くゲインもある(9)案が最終回路になりました。

[ 使用部品 ]
当HPで公表済みの6L6-PP差動アンプを流用・改造しました。
■真空管
6AU6・・ピン互換の6BA6、6CB6、6HZ6もかき集めペアテストしました、歪まなければ何でも良いと思います、結局6AU6(GEとNEC)同士の組合わせに成りました。
6N1P・・帰還管は6FQ7、6CG7、6AQ8等でバイアスVRにマッチすれば何でもOKです、今回は6N1Pにしました。
6V6・・EHとシルバニアの混成です。
■出力トランス
春日変圧器のOUT-6635Pを採用しました。当HPの6B4Gでも5998でも使用しましたがピークもディップも無い素直なトランスです。
■ヒータトランスとインターパワートランスと+B用パワートランス
←奥からヒータ(東栄の6.3V3AX2)とインター(東栄の24V3A)と+B用トランス。
■シャーシ
←電解コンは中に入れました。
■他のパーツ
←入力端子はフォーンジャックを使います これはラッキン家の標準仕様です、カップリングコンは日立の黄色他です。
[ 製 作 ]
←VR群は6N1P経由で6V6バイアスを設定します。
←7Pプラグでビーム接続/3極接続をセレクトします。
←ユニバーサル基板はDCヒーティングしたドライバ段と初段用の整流回路です。
[ 調 整 ]
6V6をL側のみに差し片側ずつ調整します、まず
(1)L側とR側のバイアスVRをマイナスに一杯回しておきます。
(2)電源オンします。
(3)(L側)6V6のV5とV6がIk=34mAとなるようにバイアスVR(C5とC6)を回します、計測箇所は6V6カソードの10オームの両端電圧です。
Ikが流れすぎる場合は6FQ7(バイアス-13V)から6N1P(バイアス-7V)に それでも調整しきれないなら6AQ8(バイアス-5V)と交換します。
(4)R側に6V6を差しB(LをRと読替え)を行います。
(5)1時間プリヒートしたら(3)〜(4)の手順を複数回繰返します。
[ 性能評価 ]
(1)電源リップルが取りきれていません、後日TRフィルターを挿入する予定です。
(2)入力AC変動によりスタテックで6V6コントロールグリッド電圧が少し変動します でもIkは変動しません、これは定電流回路のメリットと考えます。
■F特: 現用 ケース(9)、6V6が3極での超三結、6V6差動あり、6AU6抵抗負荷165K・・・最大出力 2.3W(入力0.84Vpp (1W時/RL8オーム、)

参考1:ケース(5)のF得(6V6が3極で6V6差動あり・・・最大出力 2.1W(入力0.7Vpp))
参考2:ケース(2)のF得(6V6が5極での超三結、6V6差動なし・・・最大出力 9W(入力3.4Vpp))

参考3:ケース(3)のF得(6V6が3極での超三結、6V6差動なし・・・最大出力 3W(入力1.25Vpp))

■矩形波応答:
100Hz/ 1KHz/ 10KHz 共リンギングも”なまり”も大してなく問題ありません。
[ 聴感評価 ]
■雑感:
30センチウーハ、5センチツィタ−を70センチ机下に入る事務キャビサイズのBOXに入れた場合・・・レーモンルフェーブル・グランドオーケストラで”チン”楽器音の強さと残響量が明確に判別できる様になりました分解能が良くなった感じです、高音だ低音だ!と気にしないで演奏環境に埋没してしまいます。
考察・・・当機は位相反転後にスクリーングリッドで同相キャンセルを行いその後出力段で更に差動化しています、この念を入れた同相打消し機能が良い音再現に寄与していると思いました、ウイリアムソン回路がしかりです 当HPの5598差動も同様です。
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