頭抜人ラッキンhp !!!


      5998全段差動アンプ  
     
     歴史的デバイスと新技術の融合




▼はじめに:
  中規模の出力トランスを買い貯めていました コアボリュームがあまり豊かでないこのトランスを生かすには内部抵抗がすごく低い5998を出力管にするしか無いと思ってました。

5998は本来定電圧電源の電圧制御用の双三極管です、かのWE-300Bも電圧制御に使用されると云われますからこの種の管は良い音を出す潜在能力が高いと思います、スペックはヒータが6.3V2.4A、Pdが13Wですから250V50mA位は流せます、名著”魅惑の真空管アンプ”には類似管に関しGmが高めなので僅かなバイアス変化でIpが不安定になり独立した自己バイアスにしないと暴走すると記載されていました。 

心配な事ばかりですがこの5998が動作すれば
@2A3並みが期待出来るA双三極なので管数が削減できシャーシ加工が楽B差動定電流を採用するなら面倒な使用条件(自己バイアス)もカバー出来き他管と比較しても部品点数は増えないメリットが有るのではないか、以上の知識を得て”イッテ アンプ”です 球が逝かなければ良いが!。

[ 回路構想 ]
  5998はPP差動の前提です、1相と2相のカソードは繋ぎます そうするとIpバランスは必然的にグリッド電圧でコントロールせざるを得ません この場合の1相と2相のバラツキを相殺するのにどの程度のグリッド電圧を用意すれば良いかを知るため5998ユニット間のバラツキを事前調査しました、(備忘録として記載:自己バイアスで250V40mA程流した時のカソード電圧を見た)。結果、最大8Vのバイアスバラツキが有るようです。
実験結果:
5998の1本目・・第一ユニットの6Pカソード:47.5V、第二ユニットの3Pカソード:48.0V
5998の2本目・・第一ユニットの6Pカソード:55.9V、第二ユニットの3Pカソード47.8V
5998の3本目・・第一ユニットの6Pカソード47.2V、第二ユニットの3Pカソード52.0V
5998の4本目・・第一ユニットの6Pカソード47.0V、第二ユニットの3Pカソード48.0V、 一番バラツイているのが2本目で8V超えます。

どんな5889でも使用出来る様にグリッドバイアス調整用に-8V程度を用意し かつ暴走が心配なので各カソードに自己バイアス抵抗も入れ 更に5998グリッドリーク抵抗を目一杯低く出来きる回路が必要です。ドライバー段としてはウィリアムソン式やクオード式+カソードフォロアを先ず考えましたがスマートで有りません、そこでハヤリで部品が少なくゲインも取れる[FET差動初段]+[三極管ドライバ差動]を愛用する事を考えます。

最初にエイヤで最大出力やゲインを暗算して見てみました・・・5998に約235Vかかるので出力は470Vpp可能、OUTPUTトランスは3.75K:6なので25分の1になり470/25=18.8Vpp出るこれは出力7.4W(6オーム時)に当るが出力段差動なので半分の3.7Wが最大出力かな。

5998に40〜50mA流すにはバイアスは-44V位なのでドライバーは最大88Vppの信号を出せば良くドライバー6SJ7のゲインが8倍とすれば6SJ7入力は88/8=11Vpp必要、初段はゲイン50倍として2SK170入力は11/50=0.22Vpp必要、差動で倍の0.44Vppが最大出力時の入力値かな、トータルゲインは0.44V:18.8Vで+32.6dbです、NFBを8dbを掛けると予定すれば入力1.1Vppで出力3.7wのアンプを目指せば良いかな、でも目標は良い音でオーディオライフを楽しむ事です。


決定回路図




▼初段
  2SK170BLで差動回路を組み1相に1mA流します 無調整で行けるようにId=1mAの時のVgsが近いもの同士を組合せました、共通ソースの定電流素子は2SK30Y(IDSS=2mA)を使用しマイナス電圧でプルダウンしました。
▼ドライバ
  話かわって300BアンプはF特はいまいちなのに(当方製作分)それなのに人を納得させる良い音質です、その理由の一つは”大きい電極が振動して音にゆらぎが出る”からと聞いています それとあの大柄な立ち姿で”あなたのために音を出してます”と目から訴えるからではないでしょうか、そこで話をもどし今回は”音にゆらぎ”が出る事と目で楽しめる事に期待を込めてMT管よりは電極が大きいGT管の6SJ7の三結を採用しました、この場合内部抵抗が8Kオーム増幅率は19と成りますから6CG7並と云えます それでプレート抵抗は33Kにして次段5998のグリッド抵抗が75Kと低く設定出来る様にしました。

差動部の定電流素子に2SK170を使用し共通カソード電流が8mA流れる様にしバランスVRは設けていません、何本か6SJ7を差し替えれば互いに近似動作するであろうと期待しました。
▼5998段
  @暴走の防止策として・・・
各カソードに少ないですがバイアス抵抗を188オーム入れました なぜ188オームなのかと言うと在庫として47オームと750オームを一杯持って居りどうでも良いところには並列・直列にして優先使用したのです 今回の188は47を4本シリーズにしました、その後カソード同士をつなぎ定電流素子の2SD1266のコレクタで受けました。
ただ片チャン側の2SD1266エミッタからはFET初段の+20V電源を取出しています。
それと
5998のグリッド抵抗は75Kと極力低くしました。

A固定バイアスとセルフバイアスを折衷していますがIpバランスはマイナスグリッド電圧をVRで変化させて行います 通常ならVR2個必要とするでしょうが当システムは1個しか配置していません具体的には初期調整の時にIkの少ない側のグリッドをプラス方向(0〜-8V)に変化させてIpを増加させます つまり双三極管内部ユニットのバラツキを見てから端子盤の配線を修正してグリッド片側をプラス方向に変化出来るVRにつなぐ仕掛けにしました、ちなみに他方のグリッドは-8V固定にしています。





←端子盤です 右のTR2個が5998の定電流用です

B出力トランス1次の+B入力にストッピングダイオードをいれました 動機は”良い風評”からでした。

▼電源
  @+B電圧は60W絶縁トランスを使い120Vから両波倍圧整流を行い280Vを取り出す事が出来きました その後TRフィルタリングを行い残存リップルが20mVppまで抑制出来ました、リップルは回路図に”残何Vpp”と記載してあります。

Aマイナス電源(定電流プルダウン、固定バイアス用)はヒータ巻線を2個シリーズにしてから半波整流して取出しました



[ 使用部品 ]
▼真空管
  5998・・GE製でGT管、6SJ7・・松下が2本とKENRADとマツダ製です。



←手前の2本が5998
 奥の4本が6SJ7ですメタル管・網目管・板金管をかき集めIpでペアリングしました




←5998とメタル管

▼出力トランス
  春日(無)変圧器のOUT−6635Pを採用しました、1次側が5K、2次側に16・8・6・4オームタップが有ります、変則的ですが2次側8オームに負荷6オームを繋ぎ1次を3.75Kオームにして今後使用します。
▼パワートランス
  トヨズミの60Wの100Vから120V出せる絶縁トランスです。
▼ヒータトランス
  ノグチトランスのPM633W(6.3V3Aが2巻線)です。
それ以外としては、カップリングコンはオレンジ色のフィルムコン630V0.68マイクロです、電源ダイオードは1N4007です、パワートランス1次にはスパークキラーを入れました。




←ヒューズとスパイクキラー、左に出力ターミナルが見えます



[製 作 ] 
  @いつもは勢いで製作開始するのですが今回は構想に時間を費やしました 結果、以下の機能モジュール化を進め配線部材を少くしたエコ設計が出来たと思います。
・電源モジュール・・・中型5P2列ラグ板に両波倍圧整流回路とストッピングダイオード。
・メインモジュール・・小型15P2列ラグ板にFET差動が2回路とドライバ段定電流が2回路。
・定電流モジュール・・小型6P2列ラグ板に5998定電流が2回路 それ以外は7P中継ラグ板が1個あるのみ。

構想は確かに良かったですが実作業が予想より手間取りました 何故ならラグ板のハトメ部もべろ部の穴にもワイヤが1本しか入らず穴をハツッテからでないと大部分の配線が出来なかったからです。今回のラグ板は昔のものより穴も小さいし絶縁性も悪い気がします。



←ラグ板類

A現在の5998はGT管ですが今後大柄な管(MaxΦ62)も使用できる様隣接スペースを空けて配置しました ブロック電解コンはトランス4個の中央に配置しシャーシ下に1センチほど落し込みました。




←落し込んだブロックコン、左奥がヒータトランス、右奥がパワートランス、手前の2個が出力トランスです

BシャーシはLEADブランド標準品のA4サイズのアルミシャーシを購入し自分で穴を明けました GT管6本の手明け作業はキツかったです、塗装は若草色です。

C調整中のトラブルは以下です 
 ▲-電源が-1.5Vしか出ない→後からヒータトランスの6.3V+6.3Vを半波整流する事にした でも-4Vしか出ていない、結局2SK30の足ピン違いだった。
 ▲
片チャンネルの5998に全く電流が流れない→2SD1266の足ピン違い 正は左からBCEだがECBと誤認していた。
 ▲5998のバイアスは55V必要だ→後から自己バイアス抵抗を増量した。
 ▲裸では2SD1266が熱くなる→後からシャーシに密着させ取付けた。


実は仕事でカーオーディオの設計管理をしていました 今までは他人様の設計ミスを”何でチョンボするの信じられない!”と笑ってましたが 今回は当方もミスを重ねましたもうヨレヨレです。

←リアビュー・フロントビューと内部



[ 調 整 ]
  調整中の出来事:
@6SJ7(松下#2)のプレートが時々”AM変調されたような”ノイズ波形になる、原因は球なのか・回路なのか未確認である この6SJ7は古い(S30年代の東京通信工業製TAPE-RECORDERのGT管)ので無理はない。5998の発振・Ip暴走は無い。

Aシャーシ全体が熱い・・・5998とパワートランスとヒータトランスからの伝道で非常に熱い 更にシャーシに密着のリップルフィルターTRと定電流TRの2個からの熱で熱い。

B回路図に記入したが5998プレートのノイズが0.16Vppと大きい事に戸惑っている、原因として電解コンを真中にトランス4個が密接しているためOPTがリケージフラックスを拾っている事が考えられる、でも配置変更は容易ではないので今後ショ−トリングを作りかぶせる予定。

5998バイアス調整:
@(L側・R側)端子盤への配線を回路図実線の通り行う。
A(L側・R側)VRをマイナスに一杯回す。
B電源オン。
C(L側・R側)それぞれ4個のカソード電流を抵抗の両端電圧として測る、一旦電源オフ。
D(L側・R側)電圧の少ない側のグリッドをVRの端子盤に配線し 電圧の大きい側のグリッドはFIX端子盤へ配線する。
E電源オン。
F(L側)5998の3ピンと6ピンの電位差が0になる様にVRを回す。
G(L側)定電流2SD1266の電圧降下が20Vに以下になる事を確認する。
H(R側)5998の3ピンと6ピンの電位差が0になる様にVRを回す。
I(R側)定電流2SD1266の電圧降下が20Vに以下になる事を確認する。
JFからIを複数回繰返す。



[ 性 能 ]
  ▼F特: 1W/RL8オーム時、 NF抵抗はゲートVRを55オームに設定。


▼最大力:

 4.3W/負荷8オームにて
 

▼矩形波応答:
 
100Hz,1KHz、10KHzともリンギングは有りません、なまりも無く綺麗でした。



[ 聴感評価 ]

車載用16センチSPを高さ70センチ机下に入る事務用キャビの大きさのBOXに入れた場合・・・音域のバランスが良く自然な音がします 腰の低い低音が床をはって伝わってきました サックスの響きは実物に近
いです。NF抵抗のゲートVRを120オームにしたら音の立体感が無くなりました。


   [Home]    [ページ先頭]