エコ対応の古典アンプ

■はじめに:
各誌・各氏の情報から直熱管はフィラメントをDC駆動しないとハムを取りきれないと聞いており 当方は今までフィラメントDC化で300Bや6B4アンプを複数台具現化して来ました。最近名著”魅惑の真空管アンプ”をレビューするとA先生は直熱管全モデルでDC化なぞしていないのに歪の少ないアンプを発表されています 特にその中の801Aシングルは7.5Vという高フィラメント電圧の管で歪率0.5%以下を達成しています、ハムを成敗しないと良い結果が出ませんから”何故立派な測定値が出るの?”と当方は不思議でした、でも良く考えると戦前のHIFIアンプやWEの91や86モデルもDC化していないのに実用化されているの訳ですからフィラメントDC化がマストではないのではないか と思いました、それで今回この疑問に自分なり納得しようと思い フィラメントAC点灯の300Bシングルを企画しました。

まず”直熱管のAC点灯がラッキン家で実用なるか”の予備調査を左記の回路で行いました、6B4Gは6.3Vですから5Vの300Bよりは厳しい結果となるはずです。その結果、オッシロスコープで6B4Gプレートの波形を見たところバランスVRを95%回した場所でハムが凄く小さく成るポイントが有りそのときのノイズレベルは60mV-ppでした、このセッテングでSPからは”電源オンとオフを繰返し注意して聞かないとハム音の認識が出来ない程の小さなものでした。これには当方ビックリしました従ってフィラメントAC点灯でも問題ないと判断し もし60mV-pp以上ノイズが出たら真空管本体もしくは配線技術のNGと決め付けて良いと思いました。
決定回路図

■初段、ドライバ段
公表されている300Bシングルの回路を大別すると@五極管ドライブ(カソードフォロア付加含む)A三極管+三極管のドライバ(トランスカップリング含む)BFET+三極管のドライブ(アント・アンダーマイン回路)が有ろうかと思いますが、今回は”魅惑の真空管アンプ上巻から2A3シングルMLFアンプ”を手本とし本来なら初段が6SQ7次段は6J5にするのがベストですが今回MT管1本としたいため双三極管6N1Pを採用しそれなりに定数を変更します。通常なら12AT7とするケースですがそれは止めました ただWEBサイトに6N1Pの情報がなく最大出力(Vo)や歪(Dtot)の検討が出来ないのは気がかりです。
回路は2段構成でカップリングコンデンサーを挟みP-P間にフィードバック抵抗1Mを入れます、初段のプレート負荷抵抗は240K、ドライバ段は100Kとします、エイヤと感から割り出すと初段増幅率は28、ドライバー段は25倍程度と思います、それと全体NFBをOPT2次から初段カソードへ軽くかけます。
←1本で初段とドライバに使用する6N1P、計2本。
■出力段
300Bプレートに330V供給しますもっと高圧にしたかったのですがこのトランス以外すぐ使えるものが無いのでしかたが有りません、今回は自己バイアスを採用します、Ipはシングルなのでアバウトですが左右合計で100mA程度とします、それとOPT1次の+B側にストッピングダイオードを入れます。
■電源
TRリップルフィルターを採用します、当セットは家宝として今後100年は使いたいと思いますので経年変化する電解コンは数量と容量も小さくする事に努めます、今回フィラメントDC化を止めて電解コンを少し減らしただけでもエコ設計した感覚です。
フィルタ−のTRは耐圧1500Vの2SC3486を使用し高耐圧電解コンは2個で済まします。
←VRの奥がリップルフィルタTR。
[ 使用部品 ]
当HPで公表済みの6CA7シングルを解体しその部品を利用します。
■真空管

←300B・・中国管を使用します、6N1P・・ラジオデパート3Fから購入のスベトラーナ印です。
■電源トランス ・出力トランス

←TANGOのPH120を使います、ヒータ巻線が3組ありその中に5Vタップ付きが2巻線あるのは助かります、+B電源のトランス容量が120mAなので300Bには2本で100mA流す予定です。
TANGOのU708を使用します、2次が6オームだと1次が3.5Kになるタップを選択します。
■ハムバランサー

←100オーム2WB型のVRです、これの取付けにはホームセンタで売っているL型金具の標準品をカットし折り曲げたものを使用します、VR回転防止ピンが金具の溝にピッタリ入りまるで専用設計した様です、上の画像が左チャネルで下からシャフトを回し 下の画像が右チャネルでシャフトをシャーシ内で横から回します。

←右チャネルのハムバランサー。
■シャーシ

←以前ハンドメイドしたA4サイズのシャーシを流用します電解コンは中に入れました、それとキャリング用の取っ手が左右に付きます(門扉金具です)、塗装はスプレーで赤色を吹付けました、なかなか情熱っぽくて陶酔できる色に仕上がりました。
■他のパーツ

←入力端子はフォーンジャックを使います これはラッキン家の標準仕様です、カップリングコンは日立の黄色630V0.1と高名なオレンジ色の630V0.68です。
[ 製 作 ]
パワートランスから300Bフィラメントまでの線はセッセと”よじり”ます こんなに汗をかいた事は今までありません。
 
[ 調 整 ・確 認
]
300Bプレートの残留ノイズは300mV-ppでしたテストの6B4G(GE製)より残念ながら大きいです フィラメントが長々と折り綴られているからエミションが不規則になりノイズが相殺できないのでしょうか。
SPに30センチに近づくとハムが判りますが気にはなりません、多分管が原因と思いますが今後シューティングします。
この2本の300Bは50KHzにピークが出ます、NF微分CAPを550PFにして抑えました。
あと6N1Pの評価は最大出力112V-pp取れた事とミュー30台の双三極が少ない事から合格です再利用の価値があります。
[ 性能評価 ]
■F特: 1W/RL8オーム
■最大出力:
3.5W/負荷8オーム
■矩形波応答:
100Hz/ 1KHz/ 10KHz 共リンギングも”なまり”も大してなく問題ありません。
[ 聴感評価 ]
■雑感:
車載用16センチSPを70センチ机下に入る事務用キャビの大きさのBOXに入れた場合です・・・レーモンルフェーブルさんの訃報が届きました何十年も前からレーモンルフェーブル・グランドオーケストラは一番多く聴いています、このアンプで聞くとストリングのザワザワという隠された波の様な音が立体的に聞こえます、コンデンサーの2段結合といっても低音は腰が低く粘りのある音です、ただ全体的には素直な音というより何か秘密を隠している性格のアンプと感じます。
隠しているとは繊細さのことです たしかに音域やSN比,響きは良くHIFI性も十分です、が厳しく言えば何か”前歯が浮き唾が出てウットリさせる”共振力や”このCDにこんな音も入っていたのか!”と其のつど驚かせる現場力が不足しています つまり料理でいえば空腹ではうまいが最後の満足感が少ない様です、これは当HPの5998差動と比較すると明白なのです。
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