頭抜人ラッキンhp !!!


     2SA1803差動 トランジスタ パワーアンプ  
     
      ロハスな唯一無二の回路


 

はじめに

当HPで公表した6B4GアンプのドライバをTR化したものを公表します。

背景を申せば大昔にTRパワーアンプキット、ケンクラフトのGM-620を組み立てて今も現役です、さすがに何十年も前のアンプなので出番が少なくなっていました、そこで今後も現役で鳴らせる様に新しい回路に改造します。

改造では直結・OCLにしません、理由は仕事がらカーオーディオの回路を見ていますが、それら多くの製品では出力ICメーカーが推奨していないのに、組立てメーカーが安全上独自に電コンをSP出口に入れているのです、当方はオーディオ用電コンを使用した製品ならハイレベルの製品と比べても遜色がないと思っています。
そこで今回はSP出口にニチコンMUSEを入れ音質に配慮した設計を行います。

追伸:キットと言えば、大昔は金欠で製品が買えずキットを組立てていました、パイオニアのモーターキット(アイドラードライブのレコードプレヤー)や松下のFMフロントエンド(6AQ8単管)、電気堂のデッキメカ等を購入し成品化していました。就職後はラックスキットを買い貯めましたが自分の回路を具現化する方が面白くて球プリ(SRPPでCRイコライザのキット)なぞは未開包のまま今も押入れで眠ってます。


回路図


回路説明

初段、差動定電流回路:
音が良い差動クロスSRPPに惚れ込みそれを採用すると最初から決めていました2SK170GR(Q1,Q2)を下側にして上側はNPN(Q3,Q4)とします、更に上TRのベースを他相とAC的に交差させます、この結果2大メリットが生れます、一つ目はゲインが増加する事、二つ目は同相キャンセルが行なわれ歪みが低下する事です。
差動の反転相には出力からNFBがかかり全体で位相反転を行います。

次は差動定電流回路(Q7,Q8)についてです、
定電流の電源は赤LED2個を使用した僅か3.8Vのものです、その中で次の4動作を行います、

(1)2SK170共通ソース電流を一定に保つ。 
(2)出力TRのアイドル電流決定する・・・各2SK170ドレーン電流はドライバTRの中をシリーズに流れ負荷抵抗270オームに出力TRの駆動電圧を発生させます、これが出力TRのコレクタ電流を決定します、以上の電流はQ8のVRで調整します。
(3)出力端の電圧を1/2供給電圧にバランスさせます、この設定は2SK170共通ソースのVRで行います。



(4)Q7をセンサーとして温度保証を行います・・・ヒートシンカに密着したQ7が熱くなったらQ7のベース・エミッタ間電圧が小さくなりQ8のベース電圧も小さくなり、結果として差動部電流も減少します、それが出力TRの電流減少につながります。

赤LED2個を使用した僅か3.8Vの定電流電源→









ドライバ段:
ドライバ(Q3,Q4)といっても初段と一体になっています、ただここのベース電圧がシーソーの支点の様に安定していないと全体の電圧配分が上手くいきません、本来なら安定化電圧でバイアスしたい所ですが出力端の電位モニターを行う必要が有り、その為Q4ベースに出力端からバイアスを供給しました、結果としてQ4に不要なAC的NFBが掛かりますがオッシロ観測では信号合成に問題は有りません。
それと、ここのベースは13〜14Vになり2SK170の供給電圧保護になります。

出力段:
NチャンFETを初段として最小限の割付を行ったらPNPが終段になりました。

エミッタ抵抗は片相だけに入れました、理由は、いつも当方は最初の電源投入を行う時だけはコレクタ・ベースやゲート・ドレイン間に120PFや各種保護抵抗をチョン付けして発振対策しています、今回は電源投入後にくだんの120PF全てとミッタ抵抗を削除しても支障ありませんでした、がアイドル電流計測に片相は残しました。
←右下のセメント抵抗がエッミタ抵抗 


[ 使用部品 ]

TR    

出力段の2SA1803(Q5,Q6)仕様は以下です
○ 電力増幅用
2SC4688 とコンプリメンタリになります。
40 W ハイファイオーディオアンプ出力段に最適です。
最大定格(Ta = 25°C)
項目記号定格単位
コレクタ· ベース間電圧VCBO 80 V
コレクタ· エミッタ間電圧VCEO 80 V
ベース· エミッタ間電圧VEBO 5 V
コレクタ電流IC 6 A
ベース電流IB 0.6 A
コレクタ損失PC 55 W

・初段2SK170GR(Q1,Q2)・・・Idssが5mAの自己選別品を使用しました。

・ドライバ段2SD2038(Q3,Q4)・・・この回路のメインルートは2.5mA位の手ごろな電流しか扱わず、かつ全素子のエミッタやソースには抵抗が入り増幅度が低いので、耐圧60V以上ならどんな品種でも使えると考え、流れでこれらを採用しました。

・熱センサの2SC1345(Q7)・・・ヒートシンカに密着し易い将棋の駒みたいなTRをジャンク基板から捜し出して来ました。

電解コン

←GM-620オリジナルの電解コンも使用しますが有り合わせのコンデンサをバンバン半田付けして電源平滑コンデンサは合計1万9千マイクロに、出力直流カットコンデンサも1万4千マイクロに増量しました。

シャーシ

←写真のパワーショート回路(出力コンデンサから出るボコッ音を消す)やメカ・大物部品はオリジナルを流用します。

ヒートシンカを3センチ間隔に立て、内側両面にパワーTRを留め足を真空管ソケットに挿入するアイデアが湧きました、片チャンで6本足なのでMT7ピンソケット計2個で全ての配線が出来ます、そうすれば調整時のTR切り離しも手間いらずになるハズです、その様な事情から従来のヒートシンカは取っ払います。


←黄色いものは”三輪ソーメンでも白石温麺”でも有りません、でも美味そう。 

[ 製 作 ] 

利便性を考え以下を追加します。

・SP端子は軍型ターミナルに変更する、今まではハーモニカ型でスプリング接点の端子板でした、これからはバナナプラグが使えるようにします。
←従来のGM-620にはVRが無く不便でした、今回リア面のグランドタ−ミナルを撤去し音量VRの設置します。

←全体ビュー、片チャンネル毎15P2列ラグ板に組み立てます。







←洗濯バサミで熱センスTRを密着させます。

  

 

 

 


[ 調 整 ]

片チャンネルずつ調整します。

(1)前にも述べたように全てのコレクタ・ベースとゲート・ドレイン間に120PFを仮付けします。
(2)出力TRを最初から入れてはなりません、その代わりQ5,Q6それぞれのコレクタ・エミッタ間にダミー抵抗3.3Kを入れます。
(3)電源投入します。
(4)Q8のVRを回し、
Q3ライバTRの負荷抵抗270オームを降下電圧0.666Vにします、同時に、
  Q1,Q2共通ソースVRを回し、出力コンデンサのアンプ側端が供給電圧の1/3の20Vになる様にします。
 その後、Q8のVRを絞り切ってから電源を落とします。
(5)出力TRをつなぎ、電源投入します。
(6)再度Q8のVRを回し、0.47オーム両端で75mVになる様にします、同時に、
  再度Q1,Q2共通ソースのVRを回し、出力コンデンサのアンプ側端の電圧が供給電圧の1/2の24Vにします。
  参考:調整の実績・・・0.47オーム両端を75mVとした場合、出力TRアイドルが160mAになり差動部の共通電流は5.1mAでした。
(7)仮付した120PFを外します。 

[ 性能評価 ]

(1)クロス歪みの観点で言えば出力TRのアイドル電流は360mA以上にしたいですが、安全を考え160mAにしています。
(2)温度保証回路は、24時間運用でヒートシンカが相当熱くなっても最初の電流を正確にキープします。
(3)出力TR専用
ドライバを付ければ最大出力が更に伸びます。

改善策

当回路は前半SRPPはCカップリングの”電圧制御型”、後半は”電流制御型”です、出力TRの入力インピーダンスが低過ぎてSRPP負荷が引きずられあまりゲインが稼げないのが反省です、改善策は”出力TRへの専用ドライバを追加しSRPP負荷をもっと高く”する事と考えています。


[ 聴感評価 ]

30センチウーハ、5センチツィタ−を70センチ机下に入る事務キャビサイズのBOXに入れた場合・・・西城ヒデキのベストCDを聞き込みました”ドスンドスン”超低音が出て、興奮の汗をかきました、いい〜や”ブーメランストリートと傷だらけのローラ”に感激したのかも知れません。音が硬めで腰の低い低音が特徴のアンプです。

考察:表題のロハスとは・・・ベースのキット(ケンクラフトGM-620)は1973頃秋葉に行って買ってきて当方が息を吹き込んだものです、従って今回の改造は何十年サイクルの中の1コマにしか過ぎません、何十年の中では”人生色々、人生の岐路で悪いほうに歩いてきた歴史が有ります”これらを悠久の目で見つめてきのがこのアンプです、何しろこのアンプは古女房の前の前の前に付き合ていた人も知っているくらいですから。
今回の改造は成功です、当方が逝った後も順調に動くでしょう、ただし女房・子供がその価値を理解してハードオフに出さなければの話ですが。(2008年11月吉日 頭抜人ラッキン)

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