6L6−PP差動出力メインアンプ
 
   レアな21世紀対応の回路
 


はじめに:
6CA7シングル、300Bシングル(当HP参照)が調子良いのでこれらに入っている”アント・アンダーマイン/ANT−UNDERMINE回路”をプッシュプルにも適用しました。

アント・アンダーマイン回路の特徴:
・メリット・・・5極管のゲイン/低ミュー3極管の低歪み/FETと真空管の補完による少部品構成。
・デメリット・・・”深いバイアス”管が必要(種類が少ない)。

出力ドライバー管が12AX7では”ゲイン・歪”とも不満でした、そこで低ミュー管を使って歪み問題を解決しゲイン不足はFETで補うカスケード回路を発想しました。伝送ロスが最小のこの回路は信号グランドを挟みFET部が土の下の蟻の巣の様なのでアント・アンダーマイン回路と名付けました、この回路1段で3極出力管を充分にドライブ出来ました。

当アンプの特徴:
・充分なゲインが得られるアント・アンダーマイン回路とPK位相反転回路と組合わせた。
・出力段での差動素子に三端子レギュレータを採用した。
・A電源とB電源のトランスを分離した。
・B電源を昇圧する際にインターステージ方式(一旦24V)を採用した。
   回路図

[ 設計構想 ]
初段(アント・アンダーマイン回路):
2SK170と6AR5をカスケード接続します、2SK170ドレインへの供給電圧は+29Vです、これはZenerダイオードで発生させます この1箇所から左右の6AR5カソードと左右の2SK170の負荷抵抗に供給します。

6AR5カソード抵抗が2SK170の負荷抵抗も兼ねます、6AR5が閉塞せずかつFET出力が直ぐクリップしない程度のドロップ電圧(2SK170ドレン電流x負荷抵抗)とする必要が有りますが、6AR5・2SK170共に1mA流す構想としました、その場合6AR5カソード抵抗が15Kオームで結果として6AR5バイアスは-12Vになりました。

6AR5のノンクリップ出力は70Vppでした、尚、それ以上必要な場合は6AR5周りの15Kを→12K、165Kを→100Kに交換します。

位相反転段:
初段で充分なドライブ電圧が得られたので直ぐに位相反転を行い ここでは6HZ7のPK分割を採用しました しかし回路は簡単でも各電極への電源供給は少し複雑となり内部に有った電源を総動員して各電位差を最終的には”K相負荷抵抗は90V””P相負荷抵抗は119V””P-K間電圧は137V”まで確保出来ました。

位相反転段のノンクリップ出力はP相50Vpp、K相60Vppでした、尚これより小さいレベルで出力段がクリップ始めているので全体クリップの主犯は位相反転段では有りません。


出力段:
・6L6を採用し固定バイアスとしました、バイアスが-10〜-22Vで微調出来る様にVRトリマを設けました。
←固定バイアスの調整VR群です。


・共通カソード定電流素子として5V三端子レギュレータ78M05を採用しました、専用素子との比較をしていませんが音は”満足”レベルです。
・78M05出力に75オームを接続してV5:6L6とV6:6L6のIpバランス取ったら6L6の1本に33.7mA流れました。
・極力78M05が発熱しない様バイアス電圧を再調整し 共通カソード電位を+9Vに抑えました、その結果78M05の体温は”熱いかな”程度だったので78M05は裸です。
←ラグ板に三端子レギュレータ78M05が有ります。


シャーシ上に5結/3結用のコネクタを設けプラグを抜差しする事で5結 又は3結を選択出来る様にしました。
←5結/3結用のコネクタと選択プラグです。


・3結差動の場合の無歪出力は6L6としては少なく3.5W/8オームです、その代わり音は好いです。尚、非差動3結出力は11W/8オームでした。


電源:
A電源とB電源のトランスを分離しました。

6AR5と6HZ7のヒータはDC点火しました、別のプロジェクトのため当シャーシに-95Vもレイアウトしました。
←ヒータの整流回路です。



[ 使用部品 ]

真空管,FET:
2SK170BU・・Rs=300オームでId=1mA近辺のものを選別しました。
6AR5・・大昔のNEC製です、尚、コネクタ7ピン目をオープンにすれば6AQ5も共通で使用可能です。
6HZ7・・テレビの日立製です、代用に6CB6,6AU6,6BA6なんでもOKです。
6L6GB・・SOVTEK製ここだけの話、通電10分すると口金のセメント剤が臭ってきます。

出力トランス:
春日変圧器のOUT-6635Pを採用しました。当HPの6B4Gでも使用しましたがピークもディップも無い素直な性質のトランスです、使い方次第で低音も出ます。

ヒータトランスとインターパワートランス:
東栄の6.3V3AX2と24V3Aです。
←奥からヒーター、インター、+B用トランスです。


+B用パワートランス:
欧州輸出用のTRアンプの電源トランス(240V→24V75W)を流用しました。

入力端子:
フォーンジャックを使います これだとシャーシ加工は丸穴1個で済むという理由で当方のアンプの標準仕様になっています。
←フォーンジャックとVRです。
 

[ 製 作 ]
 
シャーシ:
自分で穴を明けました、電コンは中に入れました、門扉用金具をキャリング取っ手に流用しました それと塗装は藍色です。
←全体ビューです。


[ 調 整 ]
6L6のIp:
(1)全てバイアスが最大マイナスに成るようにトリマを廻します、その後通電します。
(2)左のV6、右のV6の第1グリッドが-13.5Vに成るようにトリマを強制調整します。
(3)左のV5とV6、右のV5とV6、それぞれのカソード電位差が0に成るように左のV5、右のV5のバイアスのトリマを調整します。
(4)もしV5とV6の共通カソード電圧が9V+-0.5以外なら・・・(2)項に戻り、左のV6、右のV6の第1グリッドを-13.5以外にセットし直し、(3)(4)を繰り返します。 


[ 性能評価 ]
F特:1W/RL8オーム/3

     

最大出力:
 3.5W (負荷8オーム/3
結)。

矩形波答性:(画像省略) 
100Hz、1KHz、10KHzの3ポイントでリンギングは出ていません、10KHzは極わずかに鈍ってました。

[ 聴感評価 ]
・5結から3結にすると低音・ベース音の輪郭が明確となる。
・3結時、裕次郎さんの”夜霧よ今夜も有難う”は極低音が湧き出るように聞こえました。
 
 

 
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